AWSでAIエージェント事業を担うスワミ・シバスブラマニアン副社長が自社イベントに登壇した(同社提供) 【シリコンバレー=清水孝輔】米クラウド大手のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は16日、自律的に業務をこなす「人工知能(AI)エージェント」の構築支援に乗り出すと発表した。AIエージェントの要素機能を900種類以上用意して顧客企業の活用を促す。首位AWSを猛追する米マイクロソフトへの対抗策を打ち出した。 ビジネスTODAY ビジネスに関するその日に起きた重要ニュースを、その日のうちに深掘りします。過去の記事や「フォロー」はこちら。 米ニューヨークで16日に開いた自社イベント「AWSサミット」で表明した。エージェントAI事業を担うスワミ・シバスブラマニアン副社長は「AIエージェントを構築し、導入するにはAWSが最適な場所だ」と顧客企業らに訴えた。 AIエージェントのアプリやシステム構築に便利なツールなど900種類以上をそろえ、顧客が必要な機能を選んで使えるようにする。 これまでの生成AIは利用者の質問に答える役割が中心だった。AIエージェントは自ら判断して業務を担う。例えば飲食業向けでは利用客の問い合わせに答えるだけでなく、予約日程の変更やキャンセルまでをこなす。顧客企業の状況に合わせたシステム設計が欠かせず、AWSは機能拡充を通じて支援体制を整える。 AWSがAIエージェントに力を入れるのは、クラウド大手にとってAIの巧拙が競争力を左右するためだ。AIエージェントが事務作業の一部を担うことで、人件費を抑えてクラウド利用に振り向ける顧客企業も増えるとの見立てもある。 AWSはクラウドを通じて数百種類のAIモデルを提供している。自社の独自モデルに加えて積極的に他社モデルを取り入れることで、顧客のAI利用の選択肢を増やしてクラウドサービスの利便性を高めている。 AIエージェントでも外部連携を重視する方針だ。AWSでAI担当のゼネラルマネジャー、アンカー・メフートゥラ氏は「生成AIでは状況に応じて異なるモデルを使い分けることで高い成果を得られた。AIエージェントでも同様のサービスを提供する」とする。顧客に最適なAIエージェントを提供するために外部連携を強める方針だ。 重要な提携先の一つが米AI新興のアンソロピックだ。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は9日、アマゾンがアンソロピックに数十億ドル(数千億円)の追加投資を検討していると報じた。アマゾンは合計80億ドル程度を投資しており、AIエージェント時代の到来に向けて協業関係を深める方針とみられている。 クラウドではマイクロソフトがAI技術を武器にアマゾンを追い上げている。米調査会社シナジー・リサーチ・グループによると、25年1〜3月にアマゾンのシェアは29%で、マイクロソフトが22%だった。 マイクロソフトは米オープンAIと早期から提携し、高性能なAIモデルを提供できることでシェアを伸ばした。足元では米起業家イーロン・マスク氏が率いる米xAI(エックスエーアイ)のモデルを採用するなどオープンAI以外の技術採用にも乗り出している。AI企業を自陣に取り込むクラウド大手の競争が激しさを増している。 【関連記事】 ・米でAmazon夏セール、関税でも衣料・家電2割安 販売額3割増の予測 ・Amazon「AIで従業員が減少」 巨大テックCEOが初めて明言 ・Amazon、米東部で2.9兆円投資 AI処理向けインフラを拡張
AIエージェントのアプリやシステム構築に便利なツールなど900種類以上をそろえ、顧客が必要な機能を選んで使えるようにする。
